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西加奈子 きいろいゾウ

西加奈子 きいろいゾウ
★★☆☆☆オススメ度総合
★★☆☆☆感動度
★★★☆☆ハマリ度
★★★☆☆面白い度


前半は、とんでもなくふわふわしたたスローライフの中でのやり取りが続く。
この空気感はものすごくいい。
若い夫婦なのに、まるで50年くらい連れ添った夫婦の隠居生活を思わせる。

けど、夫婦ともに平たく言うところのヘンコ(変わり者)なので、そのやりとりや行動が非常に楽しい。
というか、老夫婦なのか小学生なのかわからん不思議ちゃん夫婦だ。

向井理と宮崎あおいで映画化されるようだけど、宮崎あおいはかなりはまってる。
でも、向井理はちょっと違うようだ。
本の中では、イケメンからは程遠い設定なのに。



旦那はムコさん、嫁はツマさん。
どちらも本名らしい。
そのあたりから、夫婦のヘンコぶりがうかがえる。
最初は、ほんとに田舎暮らしを満喫している感じで多少羨ましい生活だった。

ツマは幼い頃から病弱で、きいろいゾウはツマの幼少時代にたびたび登場する。
そのせいか、ツマは人間以外のものの声も聞こえてしまうという、何とも羨ましい特異体質の持ち主なのだ。
特に、犬のカンユさんには笑った。

だから前半は、スローライフ万歳!人生の楽園!みたいな穏やかな内容なのだけど、くすくす笑える部分もかなりある。
この、のんびりがずっと続くのかと思ったら、後半で一気に話が展開し夫婦の危機が訪れるのだ。

特に、ほどほどな容姿のムコさんに、あんな情熱的な過去があったなんてかなりびっくりだった。
背中の入れ墨の秘密も・・・。
でも、ツマのために勇気をもって過去に立ち向かったムコさんはちょっとかっこいいとも感じた。

ツマの方は、後半はさらに行動がしっちゃかめっちゃかで、大丈夫?という感じだ。
でも、そんな危機を乗り越えた夫婦愛を最後には美しくも感じる。

そして、物語の最後に大きいフォントで書かれた一行は、結構重い。

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貴志祐介 悪の教典

貴志祐介 悪の教典
★★★☆☆オススメ度総合
★☆☆☆☆感動度
★★★★☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

なんやろ、この変な感覚。
これが貴志マジック?

ハスミンはおそらく今世紀最悪の殺人鬼やのに、魅力的に見えてしまうのはなに?
なんか私もハスミンのモリタートの口笛にやられてしまった?
ここまであっけらかんと大量殺戮をやらかされたら、お疲れっした!!とか言ってしまいそうになるくらい。

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ハスミンは高校の英語教師。
ものすごくさわやかで、頭脳明晰。
指導力もあり生徒からの人望も厚い。
だから上巻の途中あたりまでは、ハスミンはいい人、いい人、いい人という印象を植え付けられてしまう。

ところが途中、クラスの女子生徒を性欲のはけ口にするあたりから、え?なに??という疑問符が飛び交う。
そして、自分が平和に生きるために邪魔な人間を排除していくあたりからは、ハスミンの異常さが怖ろしくなってくる。

上巻は、かなりハスミンの頭脳戦がみられておもしろい。
しかもどれもさわやかにやってのけるところが笑える。

しかし下巻に至っては、もう引くぐらいのバトルトワイアルの世界になっていく。
こっちが緊張しすぎて、読み終わる頃にはかなり疲れた。

非情な殺戮に疲れたのと、もうひとつはサイコパスの頭の中を理解できなくて疲れた。
一気に仕留められず苦しむ生徒に対し、担任として生徒が苦しむのはかわいそうだ、などと本気で心配するのだ。
生徒思いなのか極悪非道なのか、ハスミンの思考は読み手側まで錯乱状態に陥れる。

そんな中、最後に恐怖に耐えきれずに自殺した生徒がいた。
クラス全員を殺すつもりのハスミンが、クラスから自殺者を出したのが残念だと、まるで本当の教育者のような意見を述べているのが、自然なのか不自然なのか、笑えるのか、笑えないのか・・・。
ハスミンの頭をかち割って覗いてみたい気になってきた。

結局、最後はハスミンらしからぬ凡ミスで捕まってしまうんだけど、これもハスミンの計算のうちなのかと思える。
連行されるときも余裕でモリタートの口笛を吹くハスミンは、いつか必ず戻ってくるに違いないと思う。
いや、もう近くにいるかも。

ただひとつ、一番最後の「開くの、今日 テン(10時)」はないわ~。

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スーザン・コリンズ ハンガー・ゲーム

スーザン・コリンズ ハンガー・ゲーム
★★★☆☆オススメ度総合
★☆☆☆感動度
★★★☆☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

バトル・ロワイアルもどき。
バトロワのパクリ論争があったようだけど、まあそんな感じ。
映画はハリポタ並みに全米大ヒットのようだけど、原作もなかなかおもしろいと言えばおもしろい。

ただ、バトル・ロワイアルが参考にしたという、スティーンブン・キングの「死のロングウォーク」を読んだ時の方が、もっとえげつない感じがして衝撃的だった。
生死を分けた殺し合い場面は迫力があるけど、下巻の方は恋愛要素が多いのでバトル部分を除いてちょっとまったり気味。



アメリカの近未来国家を舞台にしたもので、富裕層が住むキャピトルという都市が、かつて自分たちに反旗を翻した12の地区からそれぞれ2名ずつ合計24名の贄を選出し、最後のひとりになるまで殺し合いのゲームをさせるというもの。
そのゲームは、すべてライブ放送されていてキャピトルの人間はショー感覚で楽しんでいる。
そして、お気に入りの贄にはスポンサーにつくこともでき、贄は場合によってはスポンサーから食料などの物資ももらえるとあって、矛盾を感じつつもキャピトルの人間に媚を売るのがものすごくいやな感じだった。

貧しい第12地区からは、幼い妹が選ばれてしまい、姉のカットニスが妹の代わりにピータという少年と参加することになるのだ。
カットニスは、極貧生活で培った狩猟などの生きる術を学んでいて、女子ながらなかなかのつわもの。

ただ、このゲームに参加するために幼い頃から特訓を受けてきたプロの贄なんてのもいて、その攻防戦やら駆け引きなんかがなかなかテンポよく進んでいく。
そして、死人が少なくなったりゲームがマンネリ化すると、キャピトルによって策を講じられ贄はますます追いつめられるのだ。
贄からすると、何をするねん!っちゅう話だ。
こんな恐ろしい世の中になったら、私なんか一発でヤラれると思う。

当初、最後のひとりになるまで戦うということで、もちろん同じ地区のカットニスとピータもいずれは殺しあうことになるんやから、そのへんどうなるんやろ、とドキドキしながら読んでいた。
そしたら終盤にきて、同じ地区の人間が2名生きてたら、どちらも優勝者です!なんて、まあ、うまい方向にルールが変更になってしまった。
ほっと胸をなでおろす反面、できすぎやろ、という感は否めなかった。
これもサクセスストーリー大好きのお国柄によるものか。

しかし、お互いが全員敵だというのに、その中である種の友情みたいなものも芽生えるシーンもあり、ほろっとさせられたりもする。
やるかやられるかという極限状態にいる中で、たとえ一時でも人との心のつながりがやっぱり必要なのだ。
残酷なのは残酷だけど、単にそれだけのストーリーではないのではないかとも思う。

そしてこれは第一部ということでまだまだ続きができそうなので、そちらも楽しみに待っていたい。

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東野圭吾 さまよう刃

東野圭吾 さまよう刃
★★★★☆オススメ度総合
★★★☆感動度
★★★☆☆ハマリ度
★★★☆☆面白い度

あかん、やりきれん。
スラスラ読み進められる読みやすさにかけては、東野氏の作品はどれも逸品やねんけど、一番イヤな題材やし。
後味悪い。

少年法って何やろ。
そら、いろんなケースがあるしちゃんと更生してる人もいっぱいいると思うけど、ケースバイケースで何とか重い罪にならんのか。
少なくとも、少年法に守られてるって自覚しながら犯罪を犯す未成年に、少年法を適用するってことがほんまアホくさい。
被害者も被害者遺族も、捕まえた刑事さえも誰も納得せえへん少年法ってなに?

強姦した相手が死んでくれれば警察に訴えられなくて済む、なんてふざけた考えのカイジとアツヤには絶対少年法なんか適用してほしくない。
強姦致死が適用されないのであれば、せめて、パイプカットの刑に処したい。
まあ、アツヤは死後パイプカット刑に処されたけど。
生きてる間に麻酔ナシでやってもまだ足らん。

普通に生きてただけなのに、こんなヤツらに目をつけられたせいで人生を終わらされた被害者と遺族の気持ちを思うとほんまにやりきれん。

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高校生の絵摩は花火を見に行った帰りに、カイジとアツヤという少年に拉致され乱暴された上クスリのせいで死に至った。
おまけに乱暴の模様をご丁寧にビデオにまでおさめ、死んだとわかると使えなくなったおもちゃみたいに川に捨てられたのだ。

しかし自分たちは少年法に守られている。
少年法という堅固な盾をふりかざして、少年たちの極悪な犯罪は続く。

しかし、娘が辱めを受けた上殺された父親の心境の前では、少年法で守られる犯人が逮捕されてもなんの意味もない。
父・長峰の復讐がここから始まるのだ。

長峰の復讐心をかきたてたのは、犯人の居場所を教える謎の密告。
アツヤを殺し、逃げるカイジを追う。

追う長峰は人生をかけてるのに、逃げるカイジはこれもゲームかなにかの一環としか考えていないのが、ほんまにむちゃくちゃ腹立つ。
もうちょっと遊んだら自首でもしよっかな~、みたいな。
バカにしてる。
だから、長峰に殺させてやりたい、と思ってしまう。
こんなヤツのために人生を棒に振るなんてバカバカしいと思う反面、何とか殺させてやりたいと強く願った。
長峰をかくまった和佳子も、同じようにに悩みぬいたのだ。

それなのに、長峰の最期は言葉にならないくらい悔しかった。
なんも殺さんでも他に方法あったんちゃうの?・・・と。
もしかしてこれでもう苦しむことがないのかもしれないが、長峰の悔いはこの世にずっと残り続ける気がする。


長峰の心理描写は、心に突き刺さるくらい素晴らしく繊細に書けてた。
それはまるで長峰が私自身に憑依したかのような、怒りや哀しみというやりきれない気持ちを手づかみで感じさせるぐらいだった。

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奥田英朗 イン・ザ・プール

奥田英朗 イン・ザ・プール
★★★☆☆オススメ度総合
★★☆☆感動度
★★★★☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

先日知らずに読んだ「空中ブランコ」が続編だったので、これは1作目も読まねば、と思い急いで読んでみた。
う~ん、微妙。

おもしろいのはおもしろいんやけど、先に読んだ「空中ブランコ」が楽しすぎて、ちょっと冷静に読んでしもた。
こっちを先に読んでればもしかして笑えたかもしれんけど、伊良部先生の奇行っぷりは「空中ブランコ」の方が突き抜けてたように思う。

パターンとしては、「イン・ザ・プール」も「空中ブランコ」も同じだ。
伊良部総合病院の神経科にやってくる患者に、伊良部ドクターがハチャメチャな行動で治療(?)していく。
伊良部先生は患者の治療のために狙ってやってるのか、それとも患者は蚊帳の外で素でやってるだけなのか、その辺の判断はきわどい。
どっちにしても患者は救われているのだから、結果オーライってところなんやと思うけど。



伊良部先生が注射で興奮するっていうのがおもしろい。
患者が来なくなったら、伊良部先生自身が精神的に病んでしまわないかちょっと心配。
そして、ほんとにマザコンなのかほんとに結婚していたことがあるのか、その辺も信ぴょう性は謎だ。
いや、たぶんほんまなんやと思うけど、ウソくさいところもひっくるめて引き込まれるんやと思う。

患者は、現代社会なら絶対いるいる、って人ばっかりで、携帯依存の人なんてざらにいそう。
精神的に病むということは、ほんとに思いつめて追いつめられている。
治療なんかも本来ならもっとデリケートなものなんだと思うけど、医者にこんなにあっけらかんと5歳児化されたら、患者の自分がしっかりせんと・・・、って感じてしまうのかも。


このシリーズが人気あるのは、もちろん伊良部先生の強烈なキャラに他ならないんだけど、もうひとつには、そんなに深刻ではないにしても、病気についてたぶん誰もが自分自身にも思い当たるフシがあるからだと思う。
私だっていくつも思い当たる部分あるある。
さすがに勃ちっぱなしはないけど。

病院に行くほどじゃないけど、この本を通じて自分が病院に行ってカウンセリングを受けている擬似的な行動を重ねあわせていたりするのかも。

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