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柳広司 ジョーカー・ゲーム

柳広司 ジョーカー・ゲーム
★★★☆☆オススメ度総合
★☆☆☆☆感動度
★★★★☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

こんな優秀すぎる人間おらんやろ?と思いながらも、
スパイの心構えが命懸けすぎてぞくぞくするくらい素敵だ。
日本のスパイものってちょっとナメてたところあったし、
もしかしたら女子受けはあんまりよくないのかもしれないのだけど、
読み始めてすぐに、うかつにも惹きこまれてしまった。
だって、敵に捕まって自白剤打たれても自白しない訓練してるんだから。
どんだけすごいねん!て話しだ。

亀梨クンが主演の映画が公開されるとあって読んでみたところ、
ストーリーが、映画と全然違うやん!ってことなんだけど、
よくよく読んでみるととこどころ重要ポイントはちゃっかり映画に使ってるみたいで、
映画は映画でド派手なアクションが映し出されるみたいだからそれはそれで面白そうなんだけど、こちらはこちらで静かーに面白い。

何がいいって、結城中佐。
この本は短編になってて、それぞれ違う諜報員がそれぞれに課せられた任務を遂行している模様が描かれてたりするんだけど、
一貫して常に登場してくるのが結城中佐なのだ。

というのも、このスパイ活動の組織であるD機関というものを作った張本人が結城中佐なのだ。
最初は冷徹な印象だった結城中佐が、
この本の一番最後に見せたほんの少しのあたたかい血の通った姿を読んだ瞬間に、
やられた!
男前すぎる・・。




5編に分かれたストーリーは・・・。
「ジョーカー・ゲーム」
日本の陸軍の暗号表をを盗んだスパイ容疑のかかったアメリカ人宅から暗号表を取り返す話し。
「幽霊 ゴースト」
テーラーの店員になりすましたスパイが英国総領事の爆弾テロ疑惑を調査する話し。
「ロビンソン」
ロンドンに潜入したスパイが敵国の諜報機関に捕えられ脱出するまでの話し。
「魔都」
上海に派遣された憲兵が知らない間にスパイに誘導されて赴任中の憲兵大尉の悪行を暴く話し。
「XX ダブル・クロス」
二重スパイ疑惑のドイツ人を内定中に死なせてしまった失態の責任を取るスパイの話し。

ってことで、それぞれのストーリーには関連性はほぼなく、
007的な手に汗握るアクション全開でもなくって、
ここに出てくるスパイは偽名を与えられ完全に自分の存在を消して秘かに活動するのだ。
そして、司令塔の結城中佐のモットーは、「死ぬな、殺すな」。
人の死は目立つから、絶対に死なない。そして、誰も殺さない。
ということをたたきこまれる。

以前美人過ぎるスパイっていうのがテレビで話題になってたけど、
もう美人っていうだけで目立ってしゃーないがな、
ってことで間違いなくD機関には採用されないだろうけど、
その点私なら・・・って話しはおいといて、
それ以前に資質的に無理だし、
それ以前に女はすぐに人を殺すから採用しないんだそうだ。
そりゃよかった。

そんな結城中佐は、かつては優秀なスパイだったのだけど、
味方の裏切りにより敵に捕まって拷問を受けたにもかかわらず、
しっかりと機密情報は持ち帰ったという一目置かれる人物なのだ。
だから、D機関の訓練生には魔王として恐れられている存在でもあるのだ。
ちょこちょこ登場する場面でも、実際随所にキレモノのニオイがぷんぷんする。

特に、最後の「XX」では、
ひとつのことに「とらわれ過ぎた」D機関の訓練生が、
そのために冷静な判断が出来ず標的の人物を死なせてしまうのだ。
スパイとしては失格だ。
だけど、一旦D機関の機密事項を知ってしまった以上、
普通の生活に戻ることはできない。
辞令が出た先は、いつ死んでもおかしくない戦場の最前線だった。

そんな格下の訓練生に、
魔王が初めて本名で名を呼び、「死ぬなよ」と声をかけ敬礼するのだ。
うー、泣かせる。

Amazon>>>ジョーカー・ゲーム (角川文庫)


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重松清 流星ワゴン

重松清 流星ワゴン
★★★★☆オススメ度総合
★★★☆☆感動度
★★★☆☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

重松氏の作品は、「とんび」もそうだったけど、父子の情愛が本当にズルイくらい感動的だ。
「流星ワゴン」は絶対に現実としてあり得ない話しだから、ヘタしたら幽霊が出てきた段階で、そらないわー、って感じでウソくささ満載になるのかと思いきや、
こんな感動的な最後を用意するっていうのはやっぱり重松氏ならでは!という気がする。
登場人物の人柄も、どれもにじみ出てくるような深い味わいがあるのだ。

選タクシーってドラマがあったのだけど、
あれは過去に戻って違う選択肢を選び、そこからの人生をやり直すって話しだったけど、
この「流星ワゴン」は過去に戻ったとしても状況を変える選択肢はないのだ。
じゃあなんで過去に戻るのかというと、現実に向き合って後悔しないためなのだ。

自分の過去は変えられないし、あの時ああしとけば今こんなに後悔しなくてもよかったのだろうか?・・なんて、現実がつらければつらいほど人は悩みも大きいのだけど、
そのつらい現実にどうやって立ち向かっていくかが問題なのだ。



主人公は38歳の一雄。
息子は家庭内暴力で引きこもり、妻はテレクラに狂っている。
会社をリストラされたことも言えず、妻には離婚を切り出され、
さらに、父は癌で余命いくばくもない状況だった。
大嫌いな父親が入院している故郷にたびたび帰るのは、父の見舞いに行くためではなく、
お車代を貰ってその差額を生活費にするためだ。

そんなサイテーの現実にうんざりして死んだっていいや、
なんて呆然と思っている一雄の前に1台のワインレッドのオデッセイが止まるのだ。
車の中には親子。
「早く乗って」とせかされた一雄はあまり不審にも思わずに乗ってしまう。
実は、この車の親子は幽霊なのだ。
5年前にたまたま一雄が新聞で交通事故死した記事を読んだのだけど、
まさにその時に死亡した親子だった。

幽霊の親子は一雄を今までの人生の大切な分岐点に連れ戻すのだ。
そこには、一雄と同い年の父親、チュウさんも存在していた。
この車はガソリンを給油する代わりに人の重い後悔で走る車だ。

過去に戻った一雄は、自分の妻がテレクラで数えきれないくらいの男と関係を持っていることを知り、あるいは自分の息子が中学受験のためにどれだけ追いつめられているかを知るのだ。

息子は中学受験を失敗する。
過去に戻った一雄は、どうにか受験をさせないように息子に接するが、
やっぱり現実は変えられず一雄はもどかしさを感じるのだ。
そんな一雄に寄り添っているのが、昔気質で一雄の大嫌いな父親だった。
ただし、父親は自分と同い年。
父でもなく友人でもなく「朋輩」、チュウさんとして接してくれるのだ。
父ならこのサイテーな状況をどう切り抜けていくのか、
あるいは、一雄に対する父のホンネの部分も
同い年だからこそ少しだけわかりあえる一雄だった。

過去を再体験した一雄は、最後に死ぬことを選ばずサイテーの現実に戻って生きることを選択する。
覚悟ができた人間は、強いってことだ。

一雄をとりまく家族も感動的なのだけど、
それと同じくらい泣かせてくれるのが実はこの幽霊親子なのだ。
妻の連れ子なので血がつながっていない父子なのだけど、
がんばって車の運転免許を取った父が初めてドライブに連れて行った日に事故って死んだのだ。
父は自分のどんくささを後悔し、成仏できずにこうしてさまよっている。
それでも子供にだけは成仏させてやりたいと願うのだ。
でも結局子供が選択するのは成仏ではなくて、父と一緒にいることだった。
なぜなら、成仏してしまうと父親と離れ離れになるからなのだ。
この子供が小生意気なんだけど、もう可愛すぎてたまらん。


このストーリーの良いところは、現実を変えられないところにあるんだと思う。
この先、希望たっぷりの現実が絶対に待ちうけていないとわかっていつつ、
生きていこうとする一雄に希望を見るのだ。
単に甘すぎない結末に、読者が自分と重ねあわせて頑張って生きていこうというチカラをもらえる気がするのだ。

Amazon>>>流星ワゴン (講談社文庫)

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森博嗣 有限と微小のパン

森博嗣 有限と微小のパン THE PERFECT OUTSIDER
★★★☆☆オススメ度総合
★★☆☆☆感動度
★★★★☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

S&Mシリーズの最終作。
英題のTHE PERFECT OUTSIDERは、「すべてがFになる」のTHE PERFECT INSIDERと対になっている。
正直、ミステリー部分のみを純粋に楽しみたい人には絶対向かない。
事件が起きるのは間違いないのだけど、
トリックを語るほどではないし、動機なんてものはこの際どうでもいい話しだからだ。

シリーズの他の作品を全部すっ飛ばしていきなり本書を読むのはおすすめしない。
ある程度は楽しめるかもしれないが、理系ミステリーとあっても、
これはミステリーの枠に収まりきらないもっと深い哲学的ものがあるからだと思うのだ。
すなわち、シリーズを通して「犀川の喪失と萌絵の解放」というテーマの集大成だからだ。

このふたりの人物のひととなりを知らなければ、
「犀川の喪失と萌絵の解放」と言っても、なんのこっちゃ?な話しになってしまうと思う。
ただ、四季を含めたS&Mワールドに心酔した読者にとっては、
神々しささえ感じられるくらいシリーズラストにふさわしい一冊だと思う。

原作ファンがこんなに多いにも関わらずドラマの評判がイマイチなのは、
単にミステリーの部分のみを取り上げて薄っぺらな感じになってしまってるからじゃないかと思うのだ。


事件は、萌絵がゼミ旅行の前乗りで出かけたユーロパークで発生する。
ユーロパークは、IT企業社長でありしかも萌絵のいいなずけでもある塙理生哉が代表を務めるナノクラフト社が経営するテーマパークなのだ。

そこで不可解な殺人事件が立て続けに起き翻弄され続ける萌絵たちだったのだが、
結局は、大株主である萌絵にナノクラフト社への興味を抱かせるため塙理生哉が仕組んだ会社ぐるみの大がかりな芝居であった。

ただし、その芝居に乗じて塙理生哉の秘書が本当の殺人も犯すのだが、
殺人の動機などはもはや取り上げるまでもない扱いだった。

一方、犀川は、妹の儀同世津子から「クライテリオン」というナノクラフト社のゲームの謎を聞く。
ゲームの内容から、真賀田四季博士が関わっていることを嗅ぎ取り、
予定を早めて極秘にユーロパークへ向かうのだ。

ナノクラフト社の研究施設には間違いなく四季がいるのではないか、
と疑った犀川と萌絵は、ダークルームと呼ばれる関係者以外立ち入り禁止ルームに入るのだ。
ここでは、バーチャルリアリティシステムの研究がなされている。
そして、ここでふたりは四季と再会を果たすことになるのだ。


萌絵の解放
萌絵は不慮の事故で両親を亡くしている。
その時のショックが原因で常に死を望みながら生きていたのだ。
人の死に対して自分の感情を遮断し、
その破滅的な記憶を無意識のうちに封印することで感情をコントロールするしかなかった。
死にたいと望みつつも生きている萌絵の中のそんな矛盾に四季は興味を持ったのだ。
そんな不安定な萌絵の感情に会見の時に気付いた四季が、
萌絵の隠ぺいされた記憶を呼び戻し精神の安定に導くことになる。
つまり、萌絵の中の死にたいと願う人格を滅し、
代わりに死を四季という印象に置き換えることによって、
萌絵は確実に死ではなく生へと導かれているのだ。
萌絵が四季を必要以上に恐れるのは死と四季が置き換えられているからなのだ。



犀川の喪失
人格というのはたいていたった一つではないにしても、
それぞれの人格が平均値を求め中庸を求めるのが一般的だ。
ところが天才というのは複数の人格は交わることなくそれぞれが独立し統合されていないのだ。
犀川にしても複数の人格を持ち、それぞれの人格が同時にそれぞれの個性で物事を見ることができる。
犀川のそんな中心的役割を担っている核の人格が、真賀田四季博士に強烈に興味を持って惹かれ続けているのだ。
バーチャルリアリティの世界で四季と再会した時、
犀川の核の人格が四季とともに四季のいる世界で生きたいと思ってしまう。
それを、周りの犀川が全力で叫び抑えるのだ。「これは虚構の世界だ!」と。
結局犀川は現実の世界で生きることを選択する。
いわば、犀川の中心的存在の人格の喪失なのだ。
「現実と虚構の違いなんて、
煙草が吸えるか、吸えないかの違いだ。
そんな僅かな違いに怯え、生と死を分ける。
有限の生と、微小の死を。」
こんな風な考えに及んだのも、犀川の中で萌絵の存在が大きかったのかもしれない、と思うのだ。


一方四季は、犀川と一緒に歩くためにこのVRシステムを開発した。
さらには「瀬戸千衣」と偽名を使って妹の儀同世津子の隣にまで引っ越し世津子と懇意になっていたのだ。
しかも1年もの期間をかけて。
いずれ犀川に接触する機会をじっと待ってたのだろうか。
「せとちい」。逆から読むといちとせ。
一歳(いちとせ)は春夏秋冬、四季のこと。
天才が、普通の奥さんを装えるくらい普通に演技もできるなんていうのが驚きだ。
それくらい四季もまた犀川の特異性に共感し惹かれていたのだろう。


ところで、四季の意図するところとこのユーロパークでの一連の事件には、
虚構と現実という大きな関係性が存在するのだ。
現実志向の塙社長に対して、VR寄りの藤原副社長の対立を、
四季は「暗くなっても、いつまでも砂場で遊んでいる二人の男の子」と表現する。
だけど、犀川と一緒に歩きたいがためにVRシステムの研究に没頭していたのなら、
四季が一番子どものように純粋なんじゃないかと思うのだ。
ただし、そんな四季の頭脳は限りなく偉大だ。
四季以外の人間は、四季にとっては有限かつ微小な細胞に過ぎず、
みんな四季の頭脳の一部として四季の思う通りに動いているに過ぎない。

とにかく四季と言う人間が恐ろしくもありミステリアスな魅力がありすぎて、
何度か読み直すとまた新たな発見に出会う最終作だった。

Amazon>>>有限と微小のパン (講談社文庫)


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湊かなえ Nのために

湊かなえ Nのために
★★★★☆オススメ度総合
★★☆☆☆感動度
★★★★☆ハマリ度
★★★★★面白い度

純愛ものって読んでて胸がキュンキュンするもんだけど、
なんだろね?このざわざわ感は。
なのにおもしろくて結局湊かなえ氏の思う壺にはまってしまう。

これって、登場人物の4人の純粋なキャラクターによるものなのか?
一見普通の若者なのに、
それぞれ内面に問題を抱えてて
誰もが誰かのことを思いやって誰かのために行動する愛すべき人物だからなのか?

だったら言葉にしようよ、なんでそこで自己完結するの?
・・・って何回ツッコミそうになったことか。
いや、やっぱり言えないか。
誰かのことを思って行動したことが、誰かを傷つけることになってたり・・。

結局、登場人物はお互いの気持ちを完全に理解せずに終わってしまうのに対し、
読者だけがそれぞれの思いを知り得てやきもきするという、
とっても不思議なストーリーだ。



ドラマでは杉下希美と成瀬慎司が同じ島の高校の同級生ということで、
とってもほんわかした雰囲気の穏やかなシーンから始まって、
ものすごく初々しい感じがさわやかでのどかで、
ゆったりした時間の流れさえ感じられたと思うのだ。

でも、原作はいきなりそれぞれの登場人物の証言から入るのだ。
高層マンションに住むセレブな野口夫妻の事件に関しての。
ところが、それらの証言は全く当たり障りのない言わばウソの証言なのだ。

その後、改めてホンネで語られる部分を読んで、
読者が納得できるようになっている。


杉下希美は、高校生の時にある日突然父親が愛人を連れてきて家を追い出された。
成瀬慎司は、実家の料亭が経営不振で閉店することになったがその後放火された。
西崎真人は、幼い頃に母親から虐待を受けて火に対するトラウマをかかえている。
安藤望は、唯一トラウマなどないが上昇志向の強い人物である。

そんな4人が高層マンションに住むセレブな野口夫妻の殺人現場に居合わせたのだ。
西崎が犯行を認め実刑を受けたが真相は全然違う。
野口氏を殴って殺したのは妻で、その後妻は自殺したのだ。
一体なぜ西崎は自ら犠牲とならなければならなかったのか。

その、真相の根底にあるものが「Nのために」なのだ。
Nというのは、それぞれの名前のイニシャル。
登場する人物は、偶然にも全てイニシャルが「N」である。

そして、誰もが自分の一番大切にしたい「N」のためを想い、
自分が想う「N」が良かれと思いながら行動するにもかかわらず、
相手には全然伝わらないまますれ違った結果、
どんでもない偶然も重なって最悪の結末を迎えてしまう。

現在と過去が錯綜する形でストーリーが進行したり、
ウソと真実が入り混じっている所も
より一層意外性を感じられて惹きこまれて行ってしまうのだ。

最後に杉下希美は病におかされ、余命宣告を受ける。
命の期限を切られた時、あの時の真実を全て知りたいと願う。
余命いくばくもない状態に置かれ当然だと思う。
なのに、やっぱりその願いは言葉にすることもなく胸の内に収めてしまうのだ。

おそらく、このあと杉下希美は真実を知らずに死んでいくのだろう。
真実を知っているコチラとしては、
最後の最後までもどかしい気持ちでいっぱいになってしまう。

Amazon>>>Nのために (双葉文庫)

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森博嗣 数奇にして模型

森博嗣 数奇にして模型 NUMERICAL MODELS
★★★☆☆オススメ度総合
★★☆☆☆感動度
★★★★☆ハマリ度
★★★☆☆面白い度

森博嗣氏のS&Mシリーズ9作目。
この「数奇にして模型」はちょっと異色で、
理系ミステリーというよりは、かなりマニアックな世界。
ラストがやや消化不良的な感じなので好き嫌いが分かれるかもしれない。
異常と正常の違い、
自分は、どこまでで一つなのか?生きていれば一つなのか?など、
なんだか禅問答的に精神世界が色濃い感じがするのだ。

タイトルの「数奇にして模型」が「好きにしてもOK」のもじりのようなのだけど、
誰が、好きにしてもOKなのか、とらえ方によって違ってくるのもおもしろい。

さらに、強烈な個性の登場人物、いつもは脇役のゼミ生の活躍、
普段は冷静な犀川先生の天然ボケと乱闘シーン、
犯人の特異性、そして、ラストのジオラマの謎。

実は、読み終わっても確実に腑に落ちない部分が多々あって、
結局読者がそれぞれの解釈を、好きにしてもOK!ということなのか?
そうなのか?



そんな私の頭を悩ます「数奇にして模型」は、
模型マニアのイベントから始まるのだ。
モデルの筒見明日香の遺体が発見された。
しかも頭部が切断された状態で。
現場は密室で明日香の隣には寺林という社会人大学院生までもが
何者かに頭を殴られて倒れていたのだ。

ところが同じ頃、寺林が通う大学の研究室でも密室殺人事件が起きていた。
殺されていたのは女子学生の上倉裕子。
実はその日、寺林と実験準備の約束をしていたのだった。

ただ、大学の研究室の鍵もイベント会場の控室の鍵も寺林が持っているはずだった。


まあ、ここまで来たらいくら寺林が気絶してたからって
絶対寺林が怪しいやろ!って話しだよね。
でもミステリーの鉄則として、一番怪しい人物は犯人ではない!
ってとこあると思うんだけど、
実は、実は・・・なのだ。


その後、明日香の兄でものすごいイケメンの3Dフィギュアのモデラーが、
芸術家らしくわけのわからん振る舞いを披露してくれるので、
お?もしかしてこの兄が妹の頭を切断した真犯人なのか?
こいつだったらありえるか?
だったら、殺された上倉裕子とも接点があったりするのか?

なんて想像してしまうのだけど、
ある日、萌絵や犀川先生や寺林やその他数人の目の前で
感電死というか、焼死というか痛ましい姿で死んでしまうのだ。


萌絵は相変わらず事件を追っかけて
無謀にも寺林と行動をともにするのだけど、
ここで寺林が本性を明らかにしてしまう。


ここからはばっちりネタバレになってしまうけど、

明日香を殺したのも寺林を殴ったのも上倉裕子。
上倉裕子は寺林が好きだったのだけど、
寺林と明日香の関係を疑って勝手に嫉妬して明日香を殺したのだ。

頭を殴られて気絶した寺林は、逆上して上倉裕子を扼殺。
その後、明日香の首を切断したのは寺林だ。

実は、寺林は明日香に好意を持っていると思われていたのだけど、
実際は明日香の兄の紀世都に興味を持っていた。

変な興味じゃなくて、
3Dフィギュアのモデラーとして、
どうしても美形の紀世都の型取りをして完璧なプロトタイプのフィギュアを作ってみたかったのだ。
いや、やっぱり変か・・。

本命は紀世都なのだけど、たまたま妹が死んでいたから、
ラッキー!!って感じで妹の頭を切断して型取りの練習をしたわけだ。

その後、紀世都を感電死させて全身の型取りをし、
みんなの目の前で自殺したように見せかけ罪をかぶせた。

ということで一応の決着がつくのだけど、
途中、紀世都が萌絵に渡した手紙が読者を混乱させる。


手紙には、何のこっちゃ?っていう内容が書かれていたのだけど、
その答えがラストで判明するのだ。
ただ、判明するとは言え、
この手紙の意味するところが謎すぎていろんな解釈ができるわけなのだ。

要するに、
明日香の首を切ったことを紀世都が知っていることを匂わす文面で、
しかもこの手紙は、保険だと書いてある。

ということは、
紀世都が単に被害者で終わっていないのではないかということだ。
型取りの練習のために明日香の首を切って寺林に提供し、
次に自分の全身の型取りのために自らの体を命をもって提供した。
実際に紀世都が実行したか言葉で操ったかはわからないが、
全て紀世都が納得し承知し、若しくは計画していたのではないか。

とさえ想像させるのだ。
そして、万が一犯人が分からない時のためにこの手紙を残しておく、
という意味の「保険」なのか?

そう考えれば、「好きにしてもOK」は、
紀世都のことなのか?

実は萌絵自身も、この事件に関してはどこか腑に落ちないまま終わるのだけど、
この手紙の件があるが故、
あとはそれぞれの読み手にゆだねられ、
犯人の犯人にしかわからない思考と嗜好と試行の至高の美学ってやつが、
私の頭も悩ませたまま未だ解決に至っていない。


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