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森博嗣 すべてがFになる

森博嗣 すべてがFになる The perfect insider
★★★★☆オススメ度総合
★★☆☆☆感動度
★★★★★ハマリ度
★★★☆☆面白い度

森博嗣氏のS&Mシリーズは、何を隠そう好きすぎてクセになるくらい好きだ。
特に、この「すべてがFになる」はシリーズの一番初めに読んだ本で、
最初に読んだ時は衝撃的だった。
ちょうどドラマでやっているので、またまた読み返してみたりしたのだけど、
たぶん、もう5回くらいは読んだ気がする。

おそらく、と言うか、確実に私自身理系とは縁遠いし、
ネタばらししてくれる説明自体、何言ってんの?犀川センセ・・、
というくらい理系な部分もあるのだけど、
文系人間をこれほどトリコにするのって一体何なのか、とっても不思議だ。

何がいいって、おそらく犀川先生と萌絵のふたりの掛け合いがいいのだけど、
これ1冊読んだだけでは、パーソナリティを理解するには難しいし、
やっぱりシリーズ全部を読んで私の頭の中でむくむくと膨らんだふたりの人物の想像図が
ドラマとはちょっとかけ離れている気がしないでもない。

綾野剛クンは、何とか犀川先生に近づいた気がするのだけど、
意味なしジョークが一切出てこないところも減点対象か。
そして、ドラマではお嬢様な萌絵がどうもピンとこない点がちょっと・・・。
これはやっぱり、執事の諏訪野と犬のトーマを出してもらわないと、
お嬢様感がイマイチなんじゃないかとも思うのだ。



そんな、「すべてがFになる」は、天才プログラマの真賀田四季博士が
とんでもないことになってしまうのか!?
という、シリーズ最初にしてドカンと一発打ちのめされるかのようなストーリーなのだ。

何しろ、真賀田四季博士の頭脳は世界一なのだ。
その真賀田四季博士が両手両足を切り落とされた姿で殺されてしまう。
・・・なんていう事は、世界にとっての大損失なのだ。

森氏は、密室トリックにかけては右に出る人はいないんじゃないかと思うのだ。
よくもそんなにバンバン密室で殺せるなー、と感心するくらい、
いろんなアイデアが出るところがスゴイのだ。

今回は、プログラマさんなら簡単に見破ることができたのかもしれないのだけど、
すべてがFになる・・・の「F」というのは、「15」のことらしいのだ。

プログラムでは16進法を使う。
16進法での一桁の数字で一番大きいのは「F」ということのようなのだ。
真賀田博士は、自らプログラムしたシステムにどうも細工を施していたのだった。

タイムカウントが「FFFF」とすべてFになった時、
研究所のシステムにエラーが出るようにしていた。

それは、7年間もの長い年月をかけて企てた計画で、
すべてがFになった時こそ、幽閉されていた研究所の地下から脱出するチャンスだったのだ。

あの、ウエディングドレス姿で死んでいたのは、
本来は真賀田四季博士のハズだったのだけど、
実際は真賀田博士が極秘裏に産んだ娘だった。

自分の娘に、14歳になったら両親を殺すように、
・・・なんてありえないことをずっと教え続けていたようで、
天才の言うことは、何言ってんの?な話しなのだけど、
四季の娘もどうやら天才ではなかったらしく、
母親の言うことが理解できなかったみたいだから、
私が理解できなくてもおそらく問題ないんだと思う。

なにしろ、人間というのは、
死んでるより生きてることの方が異常だという発想である。
殺人に対しても、両親を殺した進藤所長への復讐心だとか、
そんな感情を持ち出して殺しているわけではないのだ。

では、殺人の動機は何かと言えば、自分が死ぬためだということだ。


四季という天才には、凡人の感覚がないのだから、
淡々と作業を進めるように殺人を犯し、
何食わぬ顔で逃げおおせるという、
常識を逸脱した神出鬼没さと、
そこに全く感情がないところがよいのだ。

でもこれは、、現実問題として殺人を肯定しているという意味ではないので
誤解なきよう。

その分、一見クールな犀川先生が、
すべてを客観的に完結させてくれるところが魅力的なのだ。

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有川浩 県庁おもてなし課

有川浩 県庁おもてなし課
★★★☆☆オススメ度総合
★☆☆☆☆感動度
★★☆☆☆ハマリ度
★★★☆☆面白い度

映画にもなるし有川浩氏だし結構売れてる本なので読んでみた。
面白くないわけじゃないんだけど、有川氏の小説にしてはちょっと平坦な感じがした。
他の作品ならもっと心が動かされたり考えさせられたり淡いラブコメにきゅんとなったりっていうのが、ゆるやかな滑り台みたいな感じで訪れるんだけど。
これは、ちょっと平坦なムーヴィングウォーク系かな。

でも海外旅行に流れる人が多い中、国内の観光客誘致問題っていうのは現実に切実な問題だろうし、頭を悩ませているところだと思うので勉強になった点は色々ある。
今時は公務員といってもここまでグダグダな感じじゃないとは思うけど、高知県のPRにとってはこれかなり貢献してる気がする。
ちょっと前にも生田斗真主演のドラマで高知県が舞台になってたのがあったけど、今って高知県ブームなのかも。
確かに自然豊かで、私が住む関西圏には高知県のおいしい野菜がふんだんに入ってきてるから、高知県っていうといいイメージがいっぱいだけど。
あ、でも実際に見たあのはりまや橋は、ある意味衝撃的すぎた。

【送料無料】県庁おもてなし課 [ 有川浩 ]

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高知県の県庁におもてなし課が発足。
さあ、観光客誘致にがんばるぞ!との意気込みとは裏腹に、一体何から始めれば・・・?みたいな県庁職員たち。
とりあえず、県出身の著名人に観光特使をお願いして名刺でも配ってもらおう、ということになりお願いするのだが、そこから先、全然コトが進まない。
しびれを切らした作家、吉門が、一体どうなってんの?と県職員の掛水に苦情。
掛水は、官民の感覚のズレを指摘され、ちゃっちゃと進めるようにハッパを掛けられる。

吉門がただ恐い作家だと最初は思っていた掛水も、次第に吉門の県に対する愛を感じ取りそこから一念発起していくというもの。
その吉門がヒントをくれた人物が、かつて県庁職員で壮大なプロジェクトを提案したにもかかわらず当時の公務員的立場では許容されるものではなく、職を失してしまった清遠という人物。

清遠や吉門、そして、民間感覚を備えたバイトの多紀を通じて掛水はどんどん成長し柔軟な発想で最後には吉門に合格点をもらう。
掛水と吉門の友情、そして掛水と多紀、吉門と清遠の娘佐和とのほの甘いラブコメが一貫してほんわかした印象で読んでて安心できるストーリーだった。

個人的には吉門のキャラが一番好きだけど。

Amazon>>>県庁おもてなし課 (角川文庫)


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星野智幸 俺俺

星野智幸 俺俺
★★☆☆☆オススメ度総合
★☆☆☆☆感動度
★★☆☆☆ハマリ度
★★☆☆☆面白い度

亀梨くんが映画「俺俺」で33役するっていうので、ちょっと興味深くて読んでみた。
オレオレ詐欺の話しかと思ったら全然違った。
最初にいたずら感覚でオレオレ詐欺みたいなことをするんだけど、その後の展開が予想を超えてて、途中俺がいっぱい出てくるし突然名前が変わってしまうし一体なんのこっちゃ?!っていう感じだ。
だから33役なんだ、って納得できた。

でも、読み進めるとなんか妙に納得してしまう自分がいて、私自身もたぶん「俺」なんだと思う。
もっと軽い感じかと思ったのに、哲学的で絶対答えの出ない話だ。
読み物としては面白いんだけど、この手の話しはちょっと苦手だ。
だって、私も主人公と同じ俺で、俺の気持ちがめちゃめちゃわかるけど自分は一体何者なのか一生わからないと思うから。

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価格:578円(税込、送料込)



主人公の俺はカメラマンの道を挫折して今はカメラ屋で働いている。
ある時、たまたまマクドで隣になった男が、自分の携帯を間違って俺のトレイにのせてしまった。
俺は気づいていたけど、そのままその携帯を持ち帰ってたまたま電話のあったそいつの母親にオレオレ詐欺を仕掛けた。
母親は何の疑いもなくお金を振り込んでくる。

ところがある日、家に帰るとそいつの母親が自分の部屋にいて料理なんかを作っている。
しかも、完全に俺のことを自分の息子だと信じて。

そうこうしているうちに、俺は何気に実家に帰ってみた。
すると、自分の母親は俺のことをストーカー呼ばわりする。
さらに、実家には俺と同じ顔をした俺がいた!!

って言う具合に、どこにもかしこにも俺と同じ顔をした俺が存在することに気付く。
でも俺は、俺と同じ顔をしている俺たちといるととても安心する。
なぜなら、俺と俺たちは同じなのだから。

普段の俺は、職場なんかだと電源をオンにして俺を演じている。
家に帰ると、俺は電源をオフにして本当の俺に戻れる。
でも、俺と同じ顔をした俺たちといると考えてることも同じだし、俺を演じることもなく電源をオフにしたままいられるからとても楽なのだ。

しばらくそんな快適な俺たち生活を送っていたが、ある時から俺たちが全員敵になる。
俺と俺たちが同じわけがない!
俺は俺だけで充分なのだ。
そこで、スキがあれば俺は削除される=殺される。
俺も少なくとも3回は殺された。

・・・って本読んでないと何言ってるのか結構意味不明でしょ?
不思議の世界に行ってみたい方にはおすすめ。
でも妙に納得してしまう。

人は誰しも誰かとつながっていたい。
自分の気持ちもわかってもらいたい。
でも自分を演じたくない。
だけど人と自分とは違うんだから、完全にわかってもらうことなんてできない。
ただ、全部じゃなくてもいい、ほんの一瞬でも自分のことをわかってもらえたらそれでいじゃないか、という想いに達した時、俺は死から復活できるのだ!
・・・みたいな、今っぽい設定なのに趣旨はかなり濃いストーリーだ。

Amazonn>>>俺俺 (新潮文庫)


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渡辺淳一 雲の階段

渡辺淳一 雲の階段
★★★☆☆オススメ度総合
★☆☆☆☆感動度
★★☆☆☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

自分がウソをついてるみたいで読みながらスゴイいやな汗をかいた。
この主人公、三郎は最悪だ。
少なくとも私はこんな優柔不断な男はご免こうむりたい。
違う見方をすれば、ちょっとまじめで誰にでも分け隔てなく対応できるいい人だと思う。
ただ、いくら腕がよくてもウソで塗り固めた人生はやっぱりどこまでいってもウソなだけなんだと思う。
さらに、周りに流されて自分を持たない三郎は、どこまで逃げても同じ人生が待ってると思う。

「雲の階段」は上下に分かれてるけど、まさに渡辺淳一氏得意の医療問題&エロスの世界でかなり読みやすい。
春のドラマでこの主人公が長谷川博己だと知ってちょっと笑った。
なんかぴったりすぎて。
いや、長谷川博己が優柔不断かどうかは知らないけど、「家政婦のミタ」の時の役どころがまさに優柔不断な役だったんで、今回もなんか簡単に想像できてしまった。
ドラマもちょっとおもしろそうだ。



医師不足に悩む離島の診療所では、たったひとりの医師が島全体の医療をひとりで引き受けていた。
そんな時、島に事務員としてやってきた三郎は意外にも手先が器用で、診療所の所長はその器用さを買って医事を教え次第に手術まで任せるようになる。
新参者の三郎が所長に可愛がられることがおもしろくない他の職員が三郎につらく当たる中、ひとりの看護師明子だけは三郎に親切にする。
そのため、三郎も明子には心を許し男女の関係になってしまう。

そんなある日、所長が東京に出向いて医師不在の島で病人が運ばれてくる。
東京から遊びに来ていた学生の亜希子で、腹痛を訴えるが子宮外妊娠が疑われ緊急手術しなければ助かる見込みがない。
医師免許のない三郎は激しく動揺し躊躇するが、意を決して無我夢中で手術を終える。

助かった亜希子は東京の病院長の娘で三郎を見初め、父親である病院長からも三郎に娘との結婚を勧める。
三郎は医師免許がないことを言い出せないまま、ずるずると言われるがままに結婚して島を離れる。

ニセ外科医として亜希子の父親の病院に勤める三郎は、いつウソがバレるかとびくびくしながら毎日を送っていた。
そんな時、それはやってきた。
病院から医師免許の確認を求められたのだ。
もうこれ以上ウソをつき通すことができないと観念した三郎は、ある日逃亡する。


三郎の罪は大きすぎる。
確かに最初に無資格の者に医療行為をさせた島の所長が悪いと言えばそうなのだが、ウソをついたまま結婚するっていうのがありえない。
これは立派な詐欺だ。
さらに、島の看護師と病院長の娘のふたりのアキコと関係をもち、結局自分の都合のいい時だけ女に頼るというのがもうありえなくらい最悪だ。

もともとがまじめでウソをつき続ける自信がないんだから、最初からそんなことできない自分に気付くべきだ。
自分のウソのために母親をまきこんだり、そんなんだから、女に対してもどっちつかずでケジメをつけられないんだ。
そしてどうしようもなくなったら、自分だけとんずらして終わりにしたつもりでいる。

それと、あんなにお世話になった島の所長が下巻にはほぼ出てこない。
療養中で心配をかけたくなかったと言うのもあるかもしれないが、結婚前に何で所長に相談しなかったのかすごい不思議だ。
逃亡したあとの三郎の人生をもっと見てみたい気がするが、きっと同じことを続けていそうな気がする。
何でもう一歩勇気を持って踏み出せなかったのか、根がいい人なだけにすごい残念だ。

Amazon>>>新装版 雲の階段(上) (講談社文庫)
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有川浩 空飛ぶ広報室

有川浩 空飛ぶ広報室
★★★☆☆オススメ度総合
★★★☆☆感動度
★★☆☆☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

こう言っちゃなんだけど、自衛隊とか全く興味がなかったのにこんなに面白く読めたのはビックリだ。
特に、リカ以上に自衛隊に対する認識が小学生並みだった自分が恥ずかしい。

戦闘機パイロットをめざしていたという主人公の空井が、意外にもへなへなした感じの印象をもった。
でも、その夢を断たれた空井が、立ち直っていくまでの過程が妙に考えさせられる。
同じく目標を見失ったテレビのディレクターのリカと空井が、ともにあーだこーだやりながら成長していく様子がとてもさわやかに描かれていた。

ラブストーリーとしての要素は原作ではかなり控えめだけど、これぐらいがちょうどいい感じだ。
春ドラマでもできれば甘すぎない程度にしてほしい。

【送料無料】空飛ぶ広報室 [ 有川浩 ]

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価格:1,680円(税込、送料込)



主人公の空井は戦闘機パイロットになりたくてなりたくてついにあと一歩で夢が実現しかけたその時、不慮の事故でその夢を断たれる。
飛べなくなったパイロットの空井は、航空自衛隊の広報室に異動になった。
夢を断たれたのに、泣くことも取り乱すこともない空井を逆に周りは心配する。

そんな時、同じく夢の報道記者から外され、テレビのディレクターに異動になったリカが自衛隊の取材をするようになる。
同じような人生の挫折に悩むふたりを、広報室の室長の鷺坂が引き合わせる。

平時の自衛隊は国民の理解を得られないことも多く、その広報活動においても苦難を強いられる。
空井とリカはそれぞれ悩みながらも、少しずつ今の置かれた立場で全力を尽くすことを学習していく。
しかし、自衛隊員に異動はつきもの。
空井が異動してしまうまでに、それぞれ答えがみつけられるのか・・。


私個人としては、「あの日の松島」と「あとがき」が一番印象に残った。
震災後に付け足して書かれたものらしいが、この部分をもっと拡大してもよかったんじゃないかと思う。
有事の時は重宝がられるが、平時は特殊な目で見られる自衛隊の苦悩が初めて理解できた。
それを、よしとするのかどうかは人それぞれの考えだとは思うけど、「あの日の松島」を読みながら涙が止まらなかった。

この本を読み終わって、数日後にブルーインパルスのニュースを見た。
東日本大震災によって活動拠点を松島から福岡に変えていたが、2年ぶりにやっと松島に帰還することができた、というものだ。

おそらく、この本を読んでいなかったらこの手のニュースはまず気にも留めなかったと思う。
ブルーインパルスというものに対する知識も興味も皆無だったからだ。
2年ぶりの帰還に、「やっと・・」という思いと「まだこれから・・」という思いが交錯する。

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