有川浩 空飛ぶ広報室
★★★☆☆オススメ度総合
★★★☆☆感動度
★★☆☆☆ハマリ度
★★★★☆面白い度
こう言っちゃなんだけど、自衛隊とか全く興味がなかったのにこんなに面白く読めたのはビックリだ。
特に、リカ以上に自衛隊に対する認識が小学生並みだった自分が恥ずかしい。
戦闘機パイロットをめざしていたという主人公の空井が、意外にもへなへなした感じの印象をもった。
でも、その夢を断たれた空井が、立ち直っていくまでの過程が妙に考えさせられる。
同じく目標を見失ったテレビのディレクターのリカと空井が、ともにあーだこーだやりながら成長していく様子がとてもさわやかに描かれていた。
ラブストーリーとしての要素は原作ではかなり控えめだけど、これぐらいがちょうどいい感じだ。
春ドラマでもできれば甘すぎない程度にしてほしい。
主人公の空井は戦闘機パイロットになりたくてなりたくてついにあと一歩で夢が実現しかけたその時、不慮の事故でその夢を断たれる。
飛べなくなったパイロットの空井は、航空自衛隊の広報室に異動になった。
夢を断たれたのに、泣くことも取り乱すこともない空井を逆に周りは心配する。
そんな時、同じく夢の報道記者から外され、テレビのディレクターに異動になったリカが自衛隊の取材をするようになる。
同じような人生の挫折に悩むふたりを、広報室の室長の鷺坂が引き合わせる。
平時の自衛隊は国民の理解を得られないことも多く、その広報活動においても苦難を強いられる。
空井とリカはそれぞれ悩みながらも、少しずつ今の置かれた立場で全力を尽くすことを学習していく。
しかし、自衛隊員に異動はつきもの。
空井が異動してしまうまでに、それぞれ答えがみつけられるのか・・。
私個人としては、「あの日の松島」と「あとがき」が一番印象に残った。
震災後に付け足して書かれたものらしいが、この部分をもっと拡大してもよかったんじゃないかと思う。
有事の時は重宝がられるが、平時は特殊な目で見られる自衛隊の苦悩が初めて理解できた。
それを、よしとするのかどうかは人それぞれの考えだとは思うけど、「あの日の松島」を読みながら涙が止まらなかった。
この本を読み終わって、数日後にブルーインパルスのニュースを見た。
東日本大震災によって活動拠点を松島から福岡に変えていたが、2年ぶりにやっと松島に帰還することができた、というものだ。
おそらく、この本を読んでいなかったらこの手のニュースはまず気にも留めなかったと思う。
ブルーインパルスというものに対する知識も興味も皆無だったからだ。
2年ぶりの帰還に、「やっと・・」という思いと「まだこれから・・」という思いが交錯する。
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