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高村薫 黄金を抱いて翔べ

高村薫 黄金を抱いて翔べ
★★★☆☆オススメ度総合
★★☆☆☆感動度
★★★☆☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

いや~、すごい。
文章が硬いのでちょっととっつきにくい部分もあるが、情景描写がものすごく緻密。
だからまるで映画でも観てるかのように、目の前にその情景が現れるっていうのがすごい。
大阪が舞台になっているため、地理的なものが頭に入ってるってのもあるけど、スピード感があって流れるように進んでいく。

あまりに文章が硬すぎて、好き嫌いが分かれるかもしれない。
ただ、この終始ダークな灰色の空気感は私個人的には好きだ。

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銀行に押し入って金塊強盗を企む6人のアウトローな男たちの、無謀な計画から準備、そして実行という一連のストーリーだ。
強固な銀行の要塞をぶち破るための爆発物の入手とその仕掛け、下見のための地下の共同溝内部の様相、時系列で進む強奪の手口、特に実行当日の鬼気迫る描写など、すべてが高村氏自ら経験したんちゃうかって疑ってしまうくらいの臨場感だった。
思わず息をするのを忘れそうになってしまうのは、とても体に悪い。

命がけの強奪劇に至るまでの準備期間は、かなり長い。
男たちにはそれぞれあやしげな過去を持つ者もいるため、準備段階から障害にぶち当たるからだ。
銀行強盗とは関係のない闇の部分で、何度も命を落としそうになる。

こんなたいそうな計画をしていながら、お互いが腹のさぐりあいで心底信頼しているわけではない。
そのへんの微妙な人間心理も絶妙だ。

計画実行の間際に命を落としてしまった元北朝鮮のスパイ、モモの最期は一番泣けた。
モモ自身の数奇な運命も哀しいが、人間嫌いで人のいない土地を探し続けている幸田などは、このモモのおかげで人間を取り戻しかけていたのだ。
それがたとえ性を超えた愛情であっったとしても・・・。
お互いに哀しい者同士、心が寄り添ってしまったのだろう。

暗い過去がある分、幸田もモモも北川も、非現実的すぎて理屈抜きでかっこいいと思う。
まあ、絶対同情はできないのだけど。
一番ダメなのはこの強奪を計画した北川だ。
普通に結婚して子供までいながら、結局嫁も子供も殺されている。
家庭も守れずに、金塊なんか守ってんじゃねーよ、って話しだ。
その反面、金塊を手に入れた時は、おっしゃー!!と叫んでしまいそうになるぐらいテンションが上がる。


こんなに激しいストーリーなのに、ラストは静かだ。
とても切ない。
これからどこへ向かうのかは、読み手次第ということのようだった。

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