辻村深月 ツナグ
★★★☆☆オススメ度総合
★★★☆☆感動度
★★★☆☆ハマリ度
★★★☆☆面白い度
オムニバスストーリーが最終章に全部つながっているスタイル。
オカルトチックなものを想像していたが、霊とかそういう類の恐怖はまるでないから夜中のトイレも安心。
ついでに号泣もない。
それぞれの章で軽いジョブを打たれ、それがあとからあとからじわじわ効いてくる感じだ。
静かに噛みしめる系の小説だと思う。
ツナグ(使者)はどう見てもまだ10代男子。
死者と生者の橋渡しをするにはあまりに若い。
このツナグ自身が、生きてるのか死んでるのかさえ疑ってしまった。
最初の4章は、各依頼者の心の闇とツナグ自身の謎がもこもこ膨らむ。
そして最後の章でツナグの正体が明らかになるのである。
それは、歩美がなるべくしてなった聖職のように思えた。
人生でたった一度、死者と会うことがかなえられる。
たった一度というところがミソなんやと思う。
たとえばツナグ見習いの歩美のように、会いたいと思うのは死んでしまった母かそれとも父か。
ひとりに絞ることなんて普通はなかなかできない。
会うこと自体、生者のエゴなのではないかと葛藤する。
まず会うか会わないのかで迷いに迷うのだ。
最初の章で、その一度きりのカードを全然他人であるアイドルに使ってしまうなんてなんちゅうもったいない、と誰もが思うはず。
それでもアイドルに会った愛美は救われた。
苦しみから心が解放された。
そうかと思えば、親友に対する後ろめたい気持ちを抱えて自分が殺したかもしれない親友に会った嵐は、もう一生消えることのない重荷を背負ってこれからの人生をを過ごすことになる。
人生のあらゆる場面で迫られる決断の時、人はどう思い、考え、決断するのか。
それが合ってるか間違ってるかなんてのは誰にもわからないのだ。
別に、最後の章の種明かし部分は必要なかったかもしれない。
ツナグの存在は謎のままの方がミステリアスだ。
でも私は、やっぱり最終章はあってよかったと思う。
両親の死の真相を知った歩美が、何の濁りもなくツナグになることを引き継ぐことを決断することができた。
見習い期間中の4人の依頼者のケースがあって、ツナグとして葛藤しながらもまず歩美が一歩前へ進めたんだと思う。
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