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湊かなえ Nのために

湊かなえ Nのために
★★★★☆オススメ度総合
★★☆☆☆感動度
★★★★☆ハマリ度
★★★★★面白い度

純愛ものって読んでて胸がキュンキュンするもんだけど、
なんだろね?このざわざわ感は。
なのにおもしろくて結局湊かなえ氏の思う壺にはまってしまう。

これって、登場人物の4人の純粋なキャラクターによるものなのか?
一見普通の若者なのに、
それぞれ内面に問題を抱えてて
誰もが誰かのことを思いやって誰かのために行動する愛すべき人物だからなのか?

だったら言葉にしようよ、なんでそこで自己完結するの?
・・・って何回ツッコミそうになったことか。
いや、やっぱり言えないか。
誰かのことを思って行動したことが、誰かを傷つけることになってたり・・。

結局、登場人物はお互いの気持ちを完全に理解せずに終わってしまうのに対し、
読者だけがそれぞれの思いを知り得てやきもきするという、
とっても不思議なストーリーだ。



ドラマでは杉下希美と成瀬慎司が同じ島の高校の同級生ということで、
とってもほんわかした雰囲気の穏やかなシーンから始まって、
ものすごく初々しい感じがさわやかでのどかで、
ゆったりした時間の流れさえ感じられたと思うのだ。

でも、原作はいきなりそれぞれの登場人物の証言から入るのだ。
高層マンションに住むセレブな野口夫妻の事件に関しての。
ところが、それらの証言は全く当たり障りのない言わばウソの証言なのだ。

その後、改めてホンネで語られる部分を読んで、
読者が納得できるようになっている。


杉下希美は、高校生の時にある日突然父親が愛人を連れてきて家を追い出された。
成瀬慎司は、実家の料亭が経営不振で閉店することになったがその後放火された。
西崎真人は、幼い頃に母親から虐待を受けて火に対するトラウマをかかえている。
安藤望は、唯一トラウマなどないが上昇志向の強い人物である。

そんな4人が高層マンションに住むセレブな野口夫妻の殺人現場に居合わせたのだ。
西崎が犯行を認め実刑を受けたが真相は全然違う。
野口氏を殴って殺したのは妻で、その後妻は自殺したのだ。
一体なぜ西崎は自ら犠牲とならなければならなかったのか。

その、真相の根底にあるものが「Nのために」なのだ。
Nというのは、それぞれの名前のイニシャル。
登場する人物は、偶然にも全てイニシャルが「N」である。

そして、誰もが自分の一番大切にしたい「N」のためを想い、
自分が想う「N」が良かれと思いながら行動するにもかかわらず、
相手には全然伝わらないまますれ違った結果、
どんでもない偶然も重なって最悪の結末を迎えてしまう。

現在と過去が錯綜する形でストーリーが進行したり、
ウソと真実が入り混じっている所も
より一層意外性を感じられて惹きこまれて行ってしまうのだ。

最後に杉下希美は病におかされ、余命宣告を受ける。
命の期限を切られた時、あの時の真実を全て知りたいと願う。
余命いくばくもない状態に置かれ当然だと思う。
なのに、やっぱりその願いは言葉にすることもなく胸の内に収めてしまうのだ。

おそらく、このあと杉下希美は真実を知らずに死んでいくのだろう。
真実を知っているコチラとしては、
最後の最後までもどかしい気持ちでいっぱいになってしまう。

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