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森博嗣 数奇にして模型

森博嗣 数奇にして模型 NUMERICAL MODELS
★★★☆☆オススメ度総合
★★☆☆☆感動度
★★★★☆ハマリ度
★★★☆☆面白い度

森博嗣氏のS&Mシリーズ9作目。
この「数奇にして模型」はちょっと異色で、
理系ミステリーというよりは、かなりマニアックな世界。
ラストがやや消化不良的な感じなので好き嫌いが分かれるかもしれない。
異常と正常の違い、
自分は、どこまでで一つなのか?生きていれば一つなのか?など、
なんだか禅問答的に精神世界が色濃い感じがするのだ。

タイトルの「数奇にして模型」が「好きにしてもOK」のもじりのようなのだけど、
誰が、好きにしてもOKなのか、とらえ方によって違ってくるのもおもしろい。

さらに、強烈な個性の登場人物、いつもは脇役のゼミ生の活躍、
普段は冷静な犀川先生の天然ボケと乱闘シーン、
犯人の特異性、そして、ラストのジオラマの謎。

実は、読み終わっても確実に腑に落ちない部分が多々あって、
結局読者がそれぞれの解釈を、好きにしてもOK!ということなのか?
そうなのか?



そんな私の頭を悩ます「数奇にして模型」は、
模型マニアのイベントから始まるのだ。
モデルの筒見明日香の遺体が発見された。
しかも頭部が切断された状態で。
現場は密室で明日香の隣には寺林という社会人大学院生までもが
何者かに頭を殴られて倒れていたのだ。

ところが同じ頃、寺林が通う大学の研究室でも密室殺人事件が起きていた。
殺されていたのは女子学生の上倉裕子。
実はその日、寺林と実験準備の約束をしていたのだった。

ただ、大学の研究室の鍵もイベント会場の控室の鍵も寺林が持っているはずだった。


まあ、ここまで来たらいくら寺林が気絶してたからって
絶対寺林が怪しいやろ!って話しだよね。
でもミステリーの鉄則として、一番怪しい人物は犯人ではない!
ってとこあると思うんだけど、
実は、実は・・・なのだ。


その後、明日香の兄でものすごいイケメンの3Dフィギュアのモデラーが、
芸術家らしくわけのわからん振る舞いを披露してくれるので、
お?もしかしてこの兄が妹の頭を切断した真犯人なのか?
こいつだったらありえるか?
だったら、殺された上倉裕子とも接点があったりするのか?

なんて想像してしまうのだけど、
ある日、萌絵や犀川先生や寺林やその他数人の目の前で
感電死というか、焼死というか痛ましい姿で死んでしまうのだ。


萌絵は相変わらず事件を追っかけて
無謀にも寺林と行動をともにするのだけど、
ここで寺林が本性を明らかにしてしまう。


ここからはばっちりネタバレになってしまうけど、

明日香を殺したのも寺林を殴ったのも上倉裕子。
上倉裕子は寺林が好きだったのだけど、
寺林と明日香の関係を疑って勝手に嫉妬して明日香を殺したのだ。

頭を殴られて気絶した寺林は、逆上して上倉裕子を扼殺。
その後、明日香の首を切断したのは寺林だ。

実は、寺林は明日香に好意を持っていると思われていたのだけど、
実際は明日香の兄の紀世都に興味を持っていた。

変な興味じゃなくて、
3Dフィギュアのモデラーとして、
どうしても美形の紀世都の型取りをして完璧なプロトタイプのフィギュアを作ってみたかったのだ。
いや、やっぱり変か・・。

本命は紀世都なのだけど、たまたま妹が死んでいたから、
ラッキー!!って感じで妹の頭を切断して型取りの練習をしたわけだ。

その後、紀世都を感電死させて全身の型取りをし、
みんなの目の前で自殺したように見せかけ罪をかぶせた。

ということで一応の決着がつくのだけど、
途中、紀世都が萌絵に渡した手紙が読者を混乱させる。


手紙には、何のこっちゃ?っていう内容が書かれていたのだけど、
その答えがラストで判明するのだ。
ただ、判明するとは言え、
この手紙の意味するところが謎すぎていろんな解釈ができるわけなのだ。

要するに、
明日香の首を切ったことを紀世都が知っていることを匂わす文面で、
しかもこの手紙は、保険だと書いてある。

ということは、
紀世都が単に被害者で終わっていないのではないかということだ。
型取りの練習のために明日香の首を切って寺林に提供し、
次に自分の全身の型取りのために自らの体を命をもって提供した。
実際に紀世都が実行したか言葉で操ったかはわからないが、
全て紀世都が納得し承知し、若しくは計画していたのではないか。

とさえ想像させるのだ。
そして、万が一犯人が分からない時のためにこの手紙を残しておく、
という意味の「保険」なのか?

そう考えれば、「好きにしてもOK」は、
紀世都のことなのか?

実は萌絵自身も、この事件に関してはどこか腑に落ちないまま終わるのだけど、
この手紙の件があるが故、
あとはそれぞれの読み手にゆだねられ、
犯人の犯人にしかわからない思考と嗜好と試行の至高の美学ってやつが、
私の頭も悩ませたまま未だ解決に至っていない。


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