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百田尚樹 モンスター

百田尚樹 モンスター
★★★★☆オススメ度総合
★★☆☆☆感動度
★★★☆☆ハマリ度
★★★★☆面白い度

きつい。
おそらく東野圭吾氏の「白夜行」とか「幻夜」に並ぶくらい女の執念を書ききったストーリーだ。
だからといって、面白くないかというと全く逆で、主人公の生きざまを見届けたくて一気に読み切ってしまった。
その結果、心が痛い。
男と女のどうしようもないサガを目の前に突き付けられたみたいだ。

百田氏は、人生の悲哀なんかを書かせると天下一品だ。
とにかく読者の心を鷲掴みにして離さない。

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主人公の和子は、子供の頃から顔にコンプレックスを持っている。
周囲からは「ばけもの」と言われるくらい不細工なつくりであったようだ。
誰からも容姿を理由にバカにされ相手にされず、孤独な人生をひとりで耐え忍んできた。
幼い頃、かすかに恋心を持っていた男の子、英介に年頃になって偶然再会するが、自分の容姿に引き目を感じて何も言えない。

その後、事件を起こしたことをきっかけに、親にも縁を切られた和子は、整形を繰り返す。
整形にかかる費用は風俗で稼ぐ。
整形する。風俗で稼ぐ。整形、風俗・・・の繰り返しで、とうとう完璧なまでの美女に生まれ変わったのだ。
ただ、子供の時に恋い焦がれた英介にもう一度会って自分に関心を向けさせることだけを夢見て。
女の執念はこわい。しかもしつこい。

顔のパーツというのは、ほんの数ミリもしくはコンマ数ミリの違いで美人になったりブスになったりするらしい。
和子は、一旦は完璧な黄金比率で顔を作ったにもかかわらず、わずかに揺らぎを作って崩したりもしている。
あまりに完璧すぎるよりは、その方が魅力的なのだそうだ。
全ては、男を虜にするためだ。
まあ、私の場合は揺らぎが大きすぎてとっちらかりすぎてるから、この本読んでるとちょっと気軽に整形したくなってくる。
ただビビリなのでしないけど、整形に対する感覚が確実に麻痺してきそうだ。

だから、和子の言いようもない不公平感も分かる気がする。
それは、産まれたときから、スタート地点から差があるんだから。
そしてその差は、どんなに努力しても整形以外で埋められるものではないんだから。

顔なんてついてるパーツは同じなのに、こんな数ミリの差で、実際に男女間にしても就職にしても天と地ほどの差があるのは、経験上痛いほどわかる。
顔が変わっただけで、こんなにも露骨に男の態度が変わるというのも笑ってしまうくらいだ。

和子は38歳という若さでくも膜下出血で死ぬ。
ある意味、命がけで復讐劇を遂げた。
かつての王子様である英介を自分に振り向かせ、嫁とは離婚するとまで言わしめて虜にさせた。
そして、あの時の化け物が自分だと死ぬ間際に明かし、英介の腕の中で安らかに死んでいった。
和子は本当にこれで満足したんだろうか。

英介にしてみたら、自分が夢中になったこの絶世の美女が、あの時の不細工な女だと知った瞬間の本心はどうだったんだろう?
それでも愛情があれば、救急車を呼び置き去りにはしなかったはずではないのか。

女の美に対する狂ったまでの執着に対して、男の美女へのわかりやすい下心が悲しいくらい笑える。
唯一、和子の元の顔を知っているのにプロポーズしてきたヘルスの店長みたいな男がいたことが、かすかな救いだ。


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