東野圭吾 赤い指
★★★☆☆オススメ度総合
★★★☆☆感動度
★★★☆☆ハマリ度
★★★☆☆面白い度
読んでてものすごくイヤな気分になった。
自分自身の家族に置き換えてみた。
兄夫婦に引き取られた母が、兄嫁や孫にあからさまに嫌がられ、それでも一緒に暮らすために痴呆のふりをしていたとして、通いで母の世話をする自分がそんな母の真実を知っていたとしたら、私は絶対に耐えることなんてできるわけない。
この妹は真相を知っていながら、何でもっと早くに兄に言わへんかったんやろう。
それとも最後に恭一郎が言うように、痴呆で死んだ夫と同じ状況に身をおくことが母の希望だったんだろうか。
そういう風に思わなければ、やりきれないではないか。
住宅街で起こった少女の殺人。
犯人は普通の家庭の中三の息子。
そして息子への両親の歪んだ愛情が、家族の崩壊を招いてしまう。
子供を育てたこともない私が言うのもなんなんだけど、こんなバカ親絶対いると思う。
そしてこんなバカ親に育てられた子供は、最後まで罪の意識もなく、おまけに隠しきれなかった親のせいで逮捕されたんだと思っている。
もう末期的症状だ。
痴呆をいいことに、身代わりで殺人犯に仕立てられると知った母の気持ちを思うといたたまれない。
そんな中、加賀恭一郎はやっぱり好きだ。
真相を全部わかっていながら、無実の母に手錠をかけようとする。
全て自白させるために。
ゆっくりと時間をかけて心をゆさぶるやり方は、被疑者に対する愛情さえ感じる。
同居していても心がバラバラな家族。
それとは対照的に、一緒にいなくても心が通い合っている恭一郎親子。
家族のあり方の対比が見事に描かれている。
恭一郎は父の最後は敢えて看取らなかった。
本当はとても大好きで尊敬さえしている父の最期を。
それが父の希望だったから。
薄情な息子だと思わせて、しかし実は心が通い合っていたのだ。
将棋の話しは泣けた。
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赤い指