東野圭吾 幻夜
★★★★★オススメ度総合
★☆☆☆☆感動度
★★★★★ハマリ度
★★★★★面白い度
白夜行の続編のような、幻夜を読んでみた。
できれば白夜行を先に読んどいた方が良いカモだ。
850頁の白夜行のあとの800頁弱の幻夜。
単に長編というだけじゃなく、白夜行にも増して読後は重い。
本がじゃなく、気持ちが。
わーーーーーっと叫びたくなるくらい、うっとーしいものがあとからあとからこみあげてくる。
どうやったらこんな気持ち悪い気持ちになれるのか、妙な不完全燃焼的な何かが後を引いてたまらないのだ。
そのくせ白夜行にしても幻夜にしても、オススメ度が満点て何と支離滅裂な。
だけど不思議と、この相反する得体のしれない感情が沸き起こってきてしまうのだ。
もしかして、私もこの魔性の女に洗脳され魂を抜かれたんちゃうやろか、とちょっとビビる。
白夜行の雪穂が幻夜の美冬と同一人物かどうかという疑問は置いといて(置いとくんかい)、主人公の美冬も、美貌とカリスマ性という羨ましすぎる設定だ。
東野氏はやっぱり美人がお好きなのか。(そりゃそうか・・・。)
せやから、またまた盛大に男が騙される。
話しは阪神大震災から始まる。
震災のごたごたに乗じて、人を殺してしまった雅也にいち早く目をつけた美冬。
まるで、獲物をみつけた肉食動物的ニオイが漂ってくる。
そして食いついたら最後、骨までしゃぶられるのだ。
美冬のアーモンド型の瞳が何度も強調される。
そして、この形のいいアーモンド型の瞳こそが、この女性の一番美しくもあり怖い部分だ。
美冬は京都に育っているはずなのに、言葉が完全に大阪弁だ。
ものすごい違和感。
最後にはそのあたりの疑問も解けるのだが、こんなところにも東野氏の巧みな伏線が敷かれている。
途中結構グロい描写あり、スリル感ありで、血なまぐさい想像でわくわく感は絶頂だ。
ただこの美冬に対しては、憎しみにも似た激しい嫌悪を感じずにはいられない。
男のスケベ心を差し引いたとしても、美冬に翻弄された男たちが気の毒すぎるのだ。
なにより、美冬に洗脳され続け本当の愛を夢見たのに、魂まで殺されて最後はズタズタにされた雅也が切なすぎる。
悪女だ。
そんなにも男を利用して上にのぼりつめたいのか。
顔まで変えて、美冬は一体どこへ向かってるのか。
それが最後までわからんところが、なんかこう気持ち悪いのだ。
ラストシーンは、今だかつてないくらいえぐい。
よくもこんな残酷な幕引きにできるなぁと、読みながら吐き気がした。(吐かないけど)
しかも、この人なら絶対何とかしてくれると信じた刑事まで、あんなことになるなんて相当ショックだ。
美冬は最後の最後に、何の感情も持たない視線を雅也に向ける。
その視線、油断していると私の心にもぐっさり深く突き刺さってしまった。
・・・背筋が凍る。
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